間違い電話、というのは、全く思いもよらないところからかかってくるものである。
ある日かかってきた電話は、中華料理屋への出前の注文だった。中華料理店の場合は、どうやら配布したお品書きに間違った電話番号であるところの我が家の電話番号が載ってしまったらしい。これもひとつの数字が違うだけだ。
案の定、何回かは中華料理屋への問い合わせがかかってきた。
留守番電話のない時代だったので、お昼時にお留守のようであれば、電話番号をもう一度確認するだろうし、落ち着いて話をする人なら、しばらく応対するうちに、「間違い」だとお互いに気づいたり、番号違いの原因を探ったりする。その日の相手は違った。
電話が鳴って、受話器を取ると同時に、先方がまくしたてたのである。
「あー、中華飯店さんねー、2丁目のササキですけどねー、チャーハン三つ、餃子二つ、ラーメン三つねー、それを早めにー」
こちらが、あー違うんです、という間もなく、電話は切られてしまった。
こちらは間違われた中華料理屋の番号を知らない。注文は宙に浮いたままになってしまった。
ササキさんは、出前を待ち続けていたのだろうか。
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