ずいぶんと前の話である。
妹が外国に仕事に行った。お仲間とご一緒だったので、夕食を繁華街でとり、連れ立って宿に帰ろうとした。後ろから誰かがぶつかり、よろけた隙に肩にかけていたハンドバッグをひったくられた。
ひったくったのは若い男で、全速力でかけて逃げて行った。
彼にとって不幸だったのは、妹はスポーツ選手で、お仲間も全員、スポーツ選手だったことである。転んだ妹に先駆けて、一人が駆け出し、後を追った。立ち直った妹もすぐに体制を立て直して後を追った。
ご一行はプロのアスリートである。数時間炎天下でプレーするなど当たり前なので、瞬発力も持久力もある。これが車で逃げられたら駄目だったのかもしれないが、犯人は走って逃げたのが運のつき、結局はお仲間が数人がかりで、追いつき追い越し、つかまえて、警官に渡してしまったらしい。
目尻をつり上げた東洋人の女たちに追いかけられて、犯人もさぞ驚愕したに違いない。
教訓:ひったくるなら相手を選べ。もとい:海外旅行ではいつでも走れるスニーカー。
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