先生によって病気もまちまちだし、入院時の様子もまちまちである。
ある先生は、仕事中毒という訳でもないのに、入院中でも平時とあまり変わらない生活をしていた。
見舞いに行くと、病室にいない。看護婦に聞くと、いつも応接室にいる、とのお答え。
古い病院で、見舞客の相手が出来るちょっとした応接室があった。応接セットがいくつかと、観葉植物の大きな鉢植えのある、南向きの部屋である。ひとつの応接セットに先生がいて、他の見舞客と懇談中、のはずである。近くに寄ると、どうやら世間話ではなく、お仕事の話である。次回の講演会や出版のスケジュール調整の様子である。
先生がこちらに気づくと、やあやあと手を上げる。ちょうどいいところにきたよ、これ、ファックスしといて、と便せんを渡される。ファックスって病院の中にあるんですか、と聞くと、ナースステーションにあるよ、とお返事。便せんを抱えてナースステーションに行く。看護婦さんは「またファックスですね」と先を読んだようなお返事。「ほんとは駄目なんですよお」と言いながら、機械の場所を教えてくれた。
さては、常習犯である。
入院中であるので、好きな時間に好きなようにお仕事ができる訳で、午前中から見舞いと称して、仕事の段取り中。でも予定通り退院できないとその段取りも無効ですよお、と薬を持ってきた看護婦さんに釘をさされていた。
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