2013年9月16日月曜日

赤シャツ

一方で、ビデオの撮影時には、アシスタントは必ず新しい白いTシャツを、アンダーシャツとして着用する、というのが「隠し技」だった。

ビデオでは、撮影前に色の調整、設定を行う。このときに、撮影現場、撮影光の下の「白いもの」で、カメラを調整する。
以前はカメラとビデオデッキが別々だった。ビデオデッキにかぶせたケースのふたをめくると、白い合成皮革が貼ってあったりしたのだが、今は機材も小さくなってそんなものを仕込む隙間はない。
学生さんくらいだと、ノートやらスケッチブックやらを調達してわらわらと設定したりする。プロの現場では「ホワイトバランスをとりまーす」と言うと、アシスタントがさっと来ているシャツやトレーナーを脱ぐ。そこには新品の白シャツがあって、それでカメラの設定ができる、という段取りである。忘れそうなものは着ていく、という知恵なのだろう。

ところがある日、ホワイトバランスを撮るために、カメラマンがアシスタントに「シャツ脱いで」と指示した。アシスタントは「え?」と聞き返したらしい。聞き返されることなど想定しなかったカメラマンは、「いいから脱いで」と指示した。アシスタントが首を傾げながら、シャツを脱ぐと、下は真っ赤なシャツだった。カメラの設定には、使えない。

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