2012年11月16日金曜日

混線


映像系の授業をしているので、出来上がった作品を見るのは「上映」というかたちになる。上映できる教室というのはたいていいろいろな設備があらかじめ組み込まれていたりする。よく授業で使う教室にはワイヤレスマイクの設備が入っている。
ワイヤレス、というのは無線であるから、使っている周波数が同じだと違う教室の音声を拾ってしまったりする。
講評をしているのに、英語の授業やらフランス語の授業やらがかすかに聞こえたりする。他の授業の講評が混ざってしまったりすると、学生ではなく私のアタマの中がワープしてしまう。

講評で使っている校舎には、ビデオ収録実習のスタジオが入っている。いわゆるテレビ局のスタジオのようなものである。そこの実習と講評が重なった日に、スタジオの音声が飛び込んできたことがある。
「はーい、1カメさーん、下手の方へカメラ振ってじわじわズームしてくださーい。わかりますかあー」。
音声はかすかに、だが聞こえてくる。おー、3年生の実習中かなあ。

教室で聞いているとディレクターの指示もいまいちまどろっこしい。まあ学生だからこんなものか。
「おーい、1カメ、聞こえてるー?」
「……」
「分かったら返事してえー」
「……」
「あーあーあー、間に合わない、2カメ、急いでカバーしてー」

1カメはなぜかぼーっとしていたようである。悲痛なディレクターの叫びに、思わず教室で学生さんと聞き入ってしまった。
実習中にぼーっとすると、いけないのである。先輩の悪い見本である。

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