2013年8月22日木曜日

ウルトラマン

今年の夏はことに暑いような気がする。学生時代もこんなに暑かったかしらん。
そう言えば、と学生時代の先輩のアルバイトを思い出した。

学生時代のアルバイトと言えば、単純労働が多いのだが、肉体系重労働だとかなりペイが良いのが相場である。女子学生はガテン系な仕事にありつける率が低いが、男子学生が短期で一気に稼ぐには日雇い土方が一番である。
その先輩のある夏休みの肉体労働が「ウルトラマン」だった。

夏休みになるとデパートの屋上や遊園地のステージでコスチュームショーというのを子ども相手に開く。テレビでおなじみの正義の味方が変身後の姿でやってくるのである。
かきいれどきは、都内数カ所で同時に同じ正義の味方が出現する。
変身後の正義の味方は、全身を覆い隠すコスチュームに仮面が定番である。夏休みのショーは肉体的に過酷で、「日雇い土方」ほどの労働条件となったそうである。ペイはいいのだが、暑いので、ワンステージでぐったり。だから長時間労働や連日連夜の荒稼ぎは無理。相対的にみれば、長時間単純労働と稼ぎはあまり変わらないかもしれない。

先輩がコスチュームショーの中身、というバイトにありついて、集合場所の事務所に行くと、ずらりと「正義の味方の抜け殻」が並んでいて、サイズの合うのを探して中身になる、というものだったそうだ。だから、小柄な男子学生は「ピンク色のスカートつき正義の味方」になったりするのである。全身衣装なので、中身の性別は問わないらしい。抜け殻に合わせたアクションや見栄の切り方など教わって、お仕事である。
先輩は「ウルトラマン」の担当となり、初仕事とあいなった。デパートの屋上でしゅわっちと見栄を切り、子ども達にやんやの喝采を受ける。ステージの後は、子ども達がぞろぞろと壇上にあがり、そのまま「握手会」である。お天気のよい、夏休みの昼間、ウルトラマンの中身は張り切ってお仕事をしたので、汗だくである。ウルトラマンの衣装は、全身合成皮革である。かいた汗はウルトラマンの内部に滞留する。重力に従って、汗は下方、さきっちょにたまるのである。子どもと握手をするときは、汗のたまった手袋越しである。
「にちゃー」
という微妙な感触で、とても地球人のものとは思えないらしい。たいていの子どもは、握手をしたとたん妙な笑顔になったそうである。
ウルトラマンは、子ども達に手を振って、汗のたまったブーツからちゃぷちゃぷと音をさせながら去るのであった。

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