2013年6月25日火曜日

外側

1年生の実写ビデオの実習授業である。

撮影には、カメラ、三脚、マニュアル、カチンコ代わりのホワイトボードをセットで持たせる。
最初の取り扱い説明では、カメラを三脚に取り付けて、水平と垂直を合わせることから始まる。

ところが、撮影してきたものを見せてもらうと、たいていの場合は、絵が「斜め」だったりする。構内の建物はすべからくピサの斜塔状態である。三脚を使っているので、なおのこと、すべての絵が「斜め」なのである。

なぜそうなっているか、というといくつかの理由がある。
初心者の場合は、自分の撮影したい被写体しか見ない。ほかのものは、フレームに入っていても「out of 眼中」である。
手前に「撮影したいもの」がある場合、その向こう側は彼らの意識の外である。

カメラケースや自分たちの荷物がフレームに入っている。
ガラスに自分たちが映り込んでいる。
被写体の向こう側でヒッピホップダンスを踊っているのがいる。
遠くでサンバ研究会が派手な衣装合わせをやっている。
お掃除のおじさんが箒を巧みに使いながら背後を横切る。
業者のトラックが走り去りながら荷物を落としている。

シリアスな場面を撮影しているにもかかわらず、ギャグになる寸前である。たいていの場合、指摘しないと「映り込んでしまったもの」に気づかない。


人間の目や意識というのは不思議なものだと感心すると同時に、機械がいかに情報を「フラット」にしてしまうかということも感心してしまう。

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