2012年9月26日水曜日

往復


勤務校は東京都、とは言え、ちょっと郊外である。中央線が東京都区部を抜けて数駅、私鉄に乗り換え、駅から歩いて15-20分、というのがスタンダードなアクセスである。
当然のように、地方出身の新入生が通学し始めの頃の感想に「地方のうちより田舎」というのがある。
東京は都会、というのはかなり大きな先入観で、ちょいと考えてみただけでも、檜原村から八丈島まで東京都内なのである。

美術学校というところに通っている学生さんは、さだめし美術館や博物館、ギャラリー巡りにいそしんでいる、と一般の人は思いがちである。勤務校に限れば、そんな学生さんが大多数というわけではない。新宿や渋谷に出るだけで「電車賃が高い」と思うのが多いようで、当然のようにアパートと学校の往復だけに終始する。自分で盛り場に遊びに行く学生も減った。展覧会も、授業でノルマにしない限り行かなかったりする。「今週トーハクで…」と話し始めたら、「トーハクって何ですかあ」と聞いてきた学生もいたりした。インターネットの時代でもあり、「ネトゲ」に漬かっている学生もいたりする。

学生さんはよく遊ぶ、というのがちょいと上の世代の「一般的な認識」である。美術学校に限って言えば、良くも悪くも「遊んでいない」。

美術というのは「自分の表現」を追及するものだが、それだけでは追及できないことが多い。社会情勢や、時代の機微などというものが、作品のテーマであったり、表現の動機になったりする。学生さんの視点が外に向かない、というのは、なぜだろう。彼らの関心は、自分とインターネット上にある情報だけなのだろうか。

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