2012年9月23日日曜日

物件


勤務校は東京都、とは言え、ちょっと郊外である。中央線から私鉄に乗り換え、駅から歩いて15-20分、というのがスタンダードなアクセスである。
当然のように、地方出身の新入生が通学し始めの頃の感想に「地方のうちより田舎」というのがある。
東京が都会、というのはかなり大きな先入観で、ちょいと考えてみただけでも、檜原村から八丈島まで東京都内なのである。

地方出身者はたいてい近所にアパートを借りて住む。以前は女子寮があったり、果てしなく「下宿屋」に近いアパートがあったりした。
ふーん、と思って学校の近辺を眺めると、風呂屋の煙突が見当たらない。つまり銭湯がない。そのため間借りするには「風呂必須」である。協同であれ、占有であれ、あるいは後付け押し入れ改造風という風情のものであれ、何らかの「風呂」があった。そのため、東京の都心の学生向けのアパートよりも割高な家賃で、六畳一間きり、などという物件は少なかった。たまーに出るそんな物件を「安い!」と飛びついてしまうと、2キロ以上離れた地域の銭湯に通わなくてはならなくなる。自転車で行き帰りすれば、風呂屋に行ったのかサイクリングに行ったのかわからないし、雨でも降れば直行するバスがないのでタクシーで帰らなくてはならない。

なぜか、と言えば、このあたりには下水道がなかったからである。
考えてみると、勤務校にはプールがない。夏の夕立で、校門前の道路は冠水する。台風の時に、校舎の半地下が水浸しになったこともある。

市内の下水道が整備されたのは卒業してずいぶん経ってからだった。銭湯はもう斜陽産業なので新規開店はなかった。そのかわり、というのかどうかわからないが、10年ほど前に掘削した「天然温泉」が近所に開業した。「温泉料金」では、銭湯の代用にはならない。相変わらず近所の学生向けアパートは「風呂付き」である。

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