勤務校は東京都、とは言え、ちょっと郊外である。中央線から私鉄に乗り換え、駅から歩いて15-20分、というのがスタンダードなアクセスである。
当然のように、地方出身の新入生が通学し始めの頃の感想に「地方のうちより田舎」というのがある。
東京は都会、というのはかなり大きな先入観で、ちょいと考えてみただけでも、檜原村から八丈島まで東京都内なのである。
担当している授業科目のうち、ひとつは東京をフィールドワークして、その結果をまとめるものだ。
たいがいの学生は、東京と言えば、ビル、繁華街、雑踏、ビジネスマンというステレオタイプなイメージを持っている。それは実はメディアによって刷り込まれたイメージであったりする。自分の目ではなく、メディアを通した情報を自分のものだと思っていることに危機感を持つことも、織り込まれたテーマである。
丁寧にフィールドワーク、つまり観察を続けていると、自分なりの発見があったり、今まで見えないものが見えてきたりする。しかしそれが出来ない学生がぼちぼちといる。「情報を消費する」という言い方になるのだが、メディアの伝えた情報を確認するだけになってしまう。
結局、表層しか見えない、ということなのだが、情報の発信者になるとか、企画をする側に回るのであれば、常に「裏を読む」作業をすることになる。人が見ない/見つけていないことを発見して、それを他者に再提示することになる。