2013年5月25日土曜日

具現化


映像を志す学生さんの多くは、自分が関わったことのない表現分野である。いわば初挑戦、というタイプが多い。こういった学生さんは、たいていそれまで自分が獲得してきた表現手段ではできなかったことをしたいと思っているようである。

こういった場合、学生の頭の中には言葉で描かれたイメージがある。
「真っ白い空間に、清楚な少女がぽつんと立っていた」。

写真だろうがビデオだろうが、映像にするためには、具体的な被写体が必要である。撮影をやったことのある人なら、頭の半分で考える。
何メートル四方で、高さが何メートルの空間が必要で、しかもRのついたホリゾントつきのスタジオでないと、ロングサイズの絵は撮れない。白くするためには照明が必要だから、どのくらいの電球が必要で、それがいくつ、だから何キロワットが必要になるのか。清楚な少女、というからには、15-6歳から下だろうか、細身か、ぽっちゃりか、何を着せるか。立っていた、だから、時間的な経過をどう見せようか。とすると、今は立っていないということなのか。ううう。
という具合である。

学生さんは「思った」ら、そのイメージがカメラの前に出現すると思っていたりするようである。そうでなければ、撮られた絵は、教室内で、薄汚れた「元は」白い壁を背に、同級生が普段着で立っていたりするのである。イメージと事実の乖離に、こちらは愕然とし、学生はなんだかな、という顔をするのである。

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