2015年5月16日土曜日

一新

担当している授業は5月から9月、だから私自身は、10月以降4月一杯は出校しない。
翌年5月に新学年の授業に出ると、ピカピカの新入生に混じって、見慣れた顔がいたりする。
去年は熱心に授業に出ていたのになあ、と思う学生もいたりする。
その学生が、10月以降、どのような人生を送っていたのかはいざ知らず、である。

長い人生のうちで、1年間など、ほんの一瞬である。仕切り直して、気分一新、ピカピカの気持ちで再スタートが切れるのであれば、有意義な2度目の始まりである。

2015年5月15日金曜日

フェードアウト

ちょいとしたきっかけで学校に来なくなり、そのままずるずると来なくなってしまう学生が、ちらほら、いる。
小学校ではないので、大学では、欠席理由を届けることはない。担任の先生もいるわけではないから、欠席理由を調べたり、家庭訪問で様子を見に行ったりすることもない。
勤務校は比較的少人数の学生で、実技系なので管理が厳しいこともあって、長期欠席になると所属している研究室のスタッフがフォローを始める。

私が学生の頃だと、いつの間にか来なくなっていた学生は「宗教関係」にはまるケースがいくつかあった。サークル勧誘の季節に、ビデオ上映会に来ないかと誘われたら宗教勧誘で、そのまま入信。宗教上のルールで共同生活、私有財産はすべて共有財産となり、人生のすべてを宗教に費やす、ように洗脳されてしまう。実家の両親に「信心のため」と100万円の「花瓶」を買わせたので、実家から研究室に連絡があり、発覚したことがあった。研究室では事情を調べて、すわたいへんと対策を練ろうとした。
そんな時に、では連れ戻してきます、と火中の栗、ではなく、宗教施設に乗り込んだ学生がいた。ハマった学生に片思いをしていた男子だった。しばらくすると、女子学生は登校し始めた。宗教施設から出て、社会復帰である。しかし、連れ帰ろうとした男子はまだ帰ってこない。女子学生に聞くと、彼は入信してしまったらしい。彼女が宗教施設を出たのは、お母さんが病気だと人づてに聞いたからだという。男子の影響は皆無だった。

そんなことがあった数年間は、校内のあちこちに「無料ビデオ上映会に誘われても、行かないように」という学生生活課のビラが貼ってあった。今やインターネットで「無料動画」は見放題。今は、どうやって勧誘しているのだろうか。

2015年5月14日木曜日

成果

こういった最終日が理想ではない。

正直ちゃんは、やんわりと注意しただけで、「あまり言うことをきいてくれないんです」と言う。だから、遅刻くんもルーズくんも行為が改まらない。改めるまでねちっこく責めることが大切である。

だから私が担当している授業では、雰囲気が険悪になる前に何度かフォローをする。作業が本格的に進行しないうちに、遅刻が多いのなら、お互いに注意させる。ルーズなら、どうやったらルーズにならないか対策を立てさせる。肝心なのは、グループ内である程度のルールをつくり、自分たちで守らなくてはならない、という雰囲気を作らせることである。自主的に授業に参加している、という自覚がないと、どうしても遅刻くんやルーズくんになってしまう。だから、遅刻くんやルーズくんでもできる仕事を探して任せたりもする。グループワークでは、教員からの注意はあまり意味がない。出席しないと単位あげないよ、という脅しも意味はない。それよりも正直ちゃんにはグループ内で、「これ以上一緒にやれないから、遅刻くんはもう来ないでいい」と決めてしまう選択肢もあるよとこっそり耳打ちしておく。たいていこのあたりで、がっつり話し合ってもらうと、たいていの遅刻くんやルーズくんは消極的な授業参加を考え直すようになることが多い。

極論を言えば、大学の授業は義務教育ではない。いやいや参加するのであれば、やめてもらった方がお互いに幸せではある。
授業としては、いろいろなトラブルがあって、その中で解決方法を探し見出すことができればベストである。もちろん課題としては、良いものができればベストではある。しかし、良いものさえできれば良い、というのとは違う。作品としてはあまりよろしくなくても、トラブルをきちんと解決した方が、はるかに勉強の成果としては大きい。

2015年5月13日水曜日

積もるもの

担当している授業は朝の9時から始まる。前に何度も書いているのだが、授業は時間厳守で開始する。
9時、などという時間は、小学校の始業時間よりも随分と遅いので、来るのはたやすいはずだ。しかし5月を過ぎて、緊張感がなくなってきた学生は遅刻が多くなる。寝坊しちゃいました、で大目にに見るのは楽である。しかし、これが「たが」であり、積み重なってしまうことがある。

2年生の実技授業担当の先生と話をすると、ときどき出てくるのが、「クラスの雰囲気が険悪」。その授業もチームを組んで制作をする。最初のうちは良かったのだが、次第にチームの雰囲気がとげとげしくなってきたらしい。これがもっと悪化すると「荒れる」ようになる。

グループ制作の雰囲気悪化のきっかけは、たいていが些細なことだ。
誰かが遅刻をする。あーごめんごめん、で済ませていると、その学生は遅刻が常習化する。
誰かが、撮影用の準備を怠る、あーごめんごめん、後回しにして、で済ませていると、その学生はどんどん撮影の準備がルーズになってくる。
小さな「あーごめん」が積み重なると、正直に時刻通りに来ているのが馬鹿らしく思えてくる学生が出てくる。遅刻常習2人目である。
ここいらへんで誰かが「カツ」を入れてくれればいいのだが、最近の学生さんは「憎まれっ子」になるのが嫌いなので、黙ったままである。そうすると、準備ルーズくんが準備をすっぽかしたり、ルーズくんが2人になったりする。スケジュールがどんどん後ろに押してくる。締め切りは迫る。正直学生の目がつり上がる。もうチームワークどころではない。すでに雰囲気が険悪である。

最終提出に泣きながら間に合い、講評日である。チームが作品をプレゼンテーションする。遅刻1号もルーズ1号も堂々と「一生懸命頑張りました。作品が間に合って良かったです。良い作品になったと思います」などとコメントしてしまう。正直学生がそこでブチ切れたことがあった。
「あんたほとんど何もやってないじゃないのっっっ。誰のおかげでここに居られると思ってるのよっっっっっっ」
その場で遅刻くんとルーズくんを泣きながら糾弾した。

2015年5月12日火曜日

計画

担当している授業のうち、1年生のクラスでは、たいていが「新入学」してきた学生である。しかし、ときどき「二度目」な学生さんもいる。
私が学生のころは、クラスの1割が「元先輩」だったりした。男性を「先輩」と呼ぶのは、同期生になったので違うし、かといって「さんづけ」でもないし、でも実際には随分とトシが違うので「くんづけ」もいかがなものか、と悩んだりした。

今年も名簿を眺めていると、去年も見たようなお名前がちらほら。

現在はあまりそういうケースはないのだが、私が学生のころは「計画留年」をしている先輩がいた。受けたい授業が期間的に重複していたり、同じ授業を2度受けたい、などという猛者である。
担当していた学科では、非常勤が担当している授業で短期間、その専門の専任教員がいない、などということがあった。
ある先輩はその授業を「計画留年」して、2年続けて受講し、そのまま中退し、その分野でデザイナーとして活躍している。

ことにデザインや美術の分野では、卒業証書が役に立たないこともある。

2015年5月11日月曜日

要注意

勤務しているセクションでは授業時間のスケジュールもあって、担当授業は今週から始まる。みんなよりも少し遅めの新学期、というところだ。学生の方は4月から授業が始まっているので、すでに1ヶ月、ぼちぼち学校慣れし始めた頃、という時分である。

授業も4月初めならまだ緊張感があり、学生さんのぴりぴりした雰囲気がある。しかし5月もゴールデンウィークを過ぎれば、5月病の季節、そろそろ友達もできてだらだらし始める頃である。
私が学生、あるいは助手をやっていた頃は、ゴールデンウィークと夏休み、芸術祭という学園祭期間、それから春休み、というのが「関門」である。授業が少し「間が抜ける」ころに、ドロップアウトする「期間」である。ゴールデンウィークのドロップアウトは「大学の授業内容が期待していたものと違っていた」ので悶々とし始めたり、不本意な滑り止め入学だったのでやはり来年は気を取り直して受験し直したいのが理由で、学校に来にくくなる。少し長い目の休みがあると、どうもその後の欠席は「自主休暇」とみなされやすく、注目されにくい。気がつくと、単位危ないぞ、という状況になっていたりするのである。

これが夏休みだとアルバイトに熱中、芸術祭だとサークル活動に熱中、春休みだと人生別の意味を見出し中、ということが多い。

休み明けの欠席は要注意である。

2015年5月3日日曜日

配慮

同居人がいくつか行っている学校のうち、共学の学校の名簿は、男女の区別を名簿につけてよこしてくれる。これだと、男女の区分がついていいなあ、などと言っていたら、ここ数年は学生のうちで「要配慮」な学生が混じるようになった。

勤務校は美術系つまり実技の学校なので、身体的にハンディキャップのある学生は非常に少ない。たまーに色弱や弱視の学生がいたりするくらいだ。ここ数年でちらほら見受けるようになったのは、LGBTである。勤務校では昔からそういう先生や学生がときどきいたり、オネエ言葉の先輩がいたりしたので、私には違和感はないのだが、いまどきの本人は非常にナーバスになっていたりすることがある。どのように扱ってほしい、という注文が事前についてきたことがあった。
友人の勤務大学は美術系ではなく一般の文系学部なのだが、入試の多様化に伴い、コミュニケーション障害やADHDの学生が入学するようになったらしい。当人あるいは保護者からの申請によって、当人の受講する講座担当者には、「配慮願い」という回覧がまわってきて、指導を配慮するための方法など周知するようだ。

小さな大学、といえど、社会がそれなりに反映された縮図、でもあるようだ。

2015年5月2日土曜日

フリガナ

まあこうやって男女混合のチームにしようとしているわけだが、いまどきの学生さんの名簿では、一見で男女の区別がつきにくくなった。

いわゆるキラキラネーム、というのも多い。美術系の学校であり、親御さんがそっち方面の卒業生だったりお仕事だったりすると、お子さんの名前もコリコリに凝ってしまうのかもしれない。
美希ちゃんは女子、美樹ちゃんが男子、美貴ちゃんが男子、実樹ちゃんが女子、ということもあった。もちろん、読みにくいなあ、という字もある。どう考えても「当て字」以上、もうこれは「クイズかも」というのもある。
そういう名前は、授業初日に出席を取るときに、読みかたを学生に尋ねる。たいていの授業で常に「何て読むの」と聞かれているので、本人はうんざりしているし、周囲も冷笑気味である。

昨年から、教務課から回ってくる名簿にフリガナが併記されるようになった。ご時世、なのかもしれない。

2015年5月1日金曜日

グループ

新学期が始まって、はや1ヶ月。毎年4月に受講生の名簿をもらう。
勤務校では、学籍番号、氏名は50音順。留学生は日本語読みで並べられる。

担当している授業ではグループ作業をする。自由に組んでいたら「仲良し」グループになってしまうので、なるべく名簿順ではなくランダム、男女混合、大学までのスキルの有無など事前に教えてもらって、こちらでグルーピングをしている。学生の方は、このグループで作業するので、頑張ってね、という伝達である。もちろん社会に出れば、見知らぬ人と組むこともあるし、いつも「仲良し」グループでつるめるとは限らない。もちろん、人間的に「いやなやつ」であっても、仕事上では意外に「使えるやつ」だったりすることもある。

ところがこの「男女混合」というのがミソである。全体的に男子は少数派なので、ほっとくと男子だけでつるむようになる。教室の片隅で男子が集まって、頭を寄せ合っておしゃべりしていたりするのである。
授業内で男子グループを組んだこともある。授業成果としては「よかった」ケースよりも、「惨憺」なケースが多い。大抵は、ルーズな学生が混じっているのだが、男子同士だときつく注意をしないので、「ルーズ」がどんどん増えていく。途中で方向転換や気合いの入れ直しはせずに、最後まで走ってしまう。4人のグループなのに、実質的に作業したのは1.5人、ということもあった。
かたや、女子の方が、一般的にはルールを守りたがる傾向がある。「遅刻しちゃだめよー」と叫ぶ。オクテな男子学生だと、ええとこを見せようと頑張ってくれることもある。
一方、女子だけのチームの場合は、おおむね平均点になることが多い。ものすごーく良い方向に転んだり化けたり、ということはしない。予定調和の範囲内、かもしれないが、誰かがドロップアウトしたり、全滅になったりはしない。

体育会運動部のマネージャーが女子、というのは、うまくチームプレーをするときの、コツかもしれない。