2017年10月5日木曜日

パンク

かくして、学生さんの風体は自由である。
さすがに、いわゆる「コスプレ」風なのは、ここ数年の流行ではあるが。
以前は、風体で概ね専攻学科が分かったものだった。しかかし、最近の学生さんは実技と言ってもいわゆる「美学生」っぽくない。一般大学の学生さんと、外見ではあまり違わない。学内でコスプレして、高校の制服を着ていたりするので、なおさら、区別がつかない。
以前受け持っていた学生さんは、ロック研究会というサークルでバンド活動をしていた。バリバリのパンクロックバンドである。次第に風体が「パンクロッカー」風になっていく。進級すると、「パンクロッカー」度が上がる。男子学生だったが、胸まで長いロングヘア、パーマをかけてウェーブヘア、しかもヘアカラーを入れてメッシュヘア。もちろんいつでもさりげなくアイシャドウを入れている。夏でも革ジャン、安全ピンがあちこちについていて、背中にはドクロマーク。スリムなジーンズはあちこち穴が空いている。その頃はロンドンブーツではなく、ウエスタンブーツが流行だった。年間通してそんな格好なので、夏は汗だくで革ジャンを着ている彼を見る方が「暑い」、冬は穴あきのジーンズで穴から鳥肌が立っているのが見えるのが「寒い」。本人もバリバリのパンクロッカーのつもり、だったのだろう。何事も「パンクロッカー」たるスタイルのためと、暑くても寒くても、その風体は維持されていた。
4年生になると「就職活動」というのがある。夏休み明けに久し振りに学校に来た彼は、短髪、化粧っ気はなし、リクルートスーツでワイシャツにネクタイ、書類鞄で、研究室に推薦状をもらいにやってきた。最初は「どなたさまですか」と言いたいほどの別人ぶりである。
もともと優秀な学生だったので、結果的にはそこそこの会社には就職した。彼の「パンク」は単に外見だけだったんだねえと、卒業式後に、話題になった。パンクな格好で就職活動して、それを受け入れてもらえる度量の広い会社がないものかと、実は密かに期待していたのだが。

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