同居人が小学校に勤務していたので、運動会とか学芸会を手伝いに行くことが何度かあった。10年以上前の話だが、その頃からお母さんはホームビデオ、お父さんは一眼レフ、という両親カメラマン状態の客席をよく見た。デジタル機材になってきてからは、デジタル一眼レフとデジタルビデオカメラである。
よく学芸会で怖じ気づく子どもに、「客席は真っ暗で何も見えないから大丈夫」という妙な励ましをする教師がいたりするものだが、今日では客席は真っ暗ではなく、ぼーっと青い光に充ち満ちている。液晶モニターである。だから誰がどこに座っているのか、舞台からは丸見え。お母さんがあそこで眉間に6本ほどしわを寄せているのが見えるのである。しわを寄せているのは、台詞につっかえる息子にではなく、構えているカメラのピントがなかなか上手く合わないからであることは、舞台の息子には知る由もない。ほぼ全員がモニターを見るために顔を伏せていて、舞台を凝視している客はほとんどいない。妙な風景である。
今日だとそれがスマホになっている。日本のスマホは盗撮防止のためか、シャッター音がする。しゃかーしゃかー、とミラーもドライブもないのに機械風の音が響く。構え方は左手でスマホをホールドするスタイルになったのだが、顔は前を向いているが見ているのはやっぱりモニター画面。
行事が終わると、舞台ではなくモニターを凝視していてお疲れの親が会場から出てくる。
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