さて、美術の分野の中には、危険な作業が含まれるものがあったりする。
木工や金工の工房はもちろん、刃物や工作機械がずらりと並んでいる。最初に教わるのは「応急処置」で、事故があったときの対処方法である。怪我をして使い方を覚えていたのでは、身体がいくつあってももたないような機械である。
彫刻の工房も、粘土を扱うくらいなら怪我はないかもしれないが、木彫をやれば小さければ鑿、大きければチェーンソー、金属を扱えばガスバーナーを使って溶接をする。
彫刻の先生で、石で大きなものをつくる人がいた。そのときに制作していたのは「靴」である。学校の工房で作業をしていて、けっこうな大きさだった。学生は密かにそれを「ガリバーの靴」と名付けていた。
作品完成後、展覧会に搬入するために、「靴」はリフターで持ち上げられ移動することになった。途中、「靴」がリフターから落ちてしまった。作品は無事だったが、先生の足が「靴」の下にあって怪我をしてしまったそうである。靴に踏まれてしまったのだった。
美術も危険な作業を伴うことがあるので、先生であっても要注意、というのが基本である。