ずいぶん以前になるのだが、同居人と暮らし始めるにあたり、自動車を買い換えることになった。
自動車産業というのは、世間の景気の一歩後を追うようなところがある。開発に時間がかかるので、世間の流行と同調、というわけにはいかないからだ。
その頃は、バブル景気の少し後。国産自動車は大型化、ラグジュアリー化が流行だった。住むことになる住居は、どちらかといえば都心の住宅密集地。車庫は狭く、近隣の道路も狭い。角を回って、自宅前の道路に侵入できる自動車、つまり回転半径がなるべく小さい、5人乗り、高速で遠出もするので軽自動車はなし、車庫に入る大きさ、というのが条件だ。同居人は欲しい車を物色した。試乗に行って気に入ると、自宅まで乗らせてもらう。角を一発で曲がらなければアウト、車庫に切り換えなしでスムーズに入らなければアウトである。気に入っても、曲がれないのがいくつもあって、どんどんと条件は厳しくなった。
同居人の父親はその頃ベンツに乗っていた。これがびっくりするほどよく曲がる。国産自動車のほとんどはFF、父親のベンツはFRということもあるのだろう、自分の運転が上手なのかと錯覚するほどの曲がりようである。せまい道の交差点でも気持ちよくまわる。高級車、のイメージがあったが、むしろ実用車だと思った。もう少しサイズの小さいものがあればベストなので断念したが。
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