2016年10月14日金曜日

確認

たいてい一緒に町を歩くと、学生さんが見つけるものがここ数年同じようなものであることが気になる。メディアで取り上げられていた店、どこかの広告で使われていた風景、町を歩く若い女性の持ち物のブランド、ファミレスやコンビニの場所。
以前は、テレビや雑誌で見た情報をなぞるな、というのが多かった。テレビや雑誌で見た「あの店」があったなどと喜んでいる学生がいる。例えば、テレビで旅行番組がある、その情報を確認するために旅行に出向く、あの番組でやっていたあの風景を確認した、良かった、という旅行の方法があるが、その様相である。メディアの情報を「確認」するだけであって、「見つける」わけではない。

授業はフィールドワークなので、自分で歩いて発見することから始まる。既存の情報を確認するわけではない。…のだが、やはりどうしても既存の情報に頼りたくなるのがいまどきの学生なのかもしれない。ここ数年だと、インターネットで情報を探しながら街を歩くようになった。
フィールドワークの見本で、みんなで月島を歩くのだが、なぜか数名は歩きスマホである。地図でも見ながら、路地を確認して歩いているのかと思ったら、「おいしいもんじゃ焼き屋さんの場所」を確認している。まあ、ポケモンGoしながらじゃないだけ、マシなのかもしれないが。 

2016年10月13日木曜日

歩く

東京の街歩き、というフィールドワークをもとに授業を初めて10年ほどになる。勤務校は東京都下なのだが、多摩地域にある。私が学生の頃は地方出身者が多かったが、現在は7割近くが首都圏の出身者である。

首都圏、とは言っても、千葉埼玉神奈川、というところが多い。学生さんは「首都圏」イコール「東京」と思っていたりするのだが、しょせん「思い込み」なので、知らないことがはるかに多い。まあそんな学生に、東京という「場所」でフィールドワークをして、自分なりの発見をして、コンテンツにまとめなさい、という授業をやっている。自分の足で歩いて、見て、聞いて、それをネタにして、コンテンツに仕上げるのが目標である。
犬も歩けば、ではないが、面白いネタは町中にたくさん転がっている。まずは自分が面白がれるネタを見いだすことから始まる。
歩いているだけで、ネタをたくさん拾ってくる学生もいれば、歩いてみたけれど何も見つからないと言う学生もいる。何を見つけるか、ではなく、何を面白がれるか、という方が勝負になってくることがある。それは「好奇心」の違いなのかもしれない。 

2016年10月12日水曜日

遅刻

担当している授業は、実習で、学生さんのグループ制作である。
朝9時に集合、早速グループに分かれて作業開始、なのだが、たいてい遅刻してくる学生がいる。そういう学生はたいてい、教室に入って、私のところへ直行して、こう言う。
「遅刻してすみません」。

私にではなく、所属しているグループのメンバーにまず言うべきだろう。その学生が15分遅刻したとする。遅刻した学生は15分授業に出られない「損」をしている。グループは4名、残りの3名は遅刻者を待つために15分過ごす。他者の15分、3名分、45分の無駄である。自分の遅刻は、他者の時間の無駄、なのである。
そうして、遅刻しがちな学生は、何度か遅刻をすると、メンバーからの信頼度が落ちていく。最初は「早く来てよ」だったのが、数回後には「どうせ来ない」になる。そのうち、それをカバーするほかのメンバーが「不公平感」を抱く。いつも遅刻しているあの人と、提出する作品は共同制作で「同じ」、つまり同じ評価になるのではないか。

いまどきの学生さんは、自分にも甘くて他者にも甘い、良い意味で言えば「優しい」のか、あまり不平を漏らすことはない。10年ほど前だと、明らかに不公平だ、と叫ぶ学生がいた。私は朝5時に起きて始発に乗って学校に来る。あの人の遅刻の理由は「単なる寝坊」である。しかも下宿で学校から徒歩10分に住んでいる。許せない、というわけだ。
「すみません」、と学生が談判に来る。
「遅刻しているあの人と、授業の評価が同じであることは理解できない。できれば、遅刻者の評価をひとつ下げて欲しい」。

自分に厳しいと、他者にも厳しい。良い意味で言えば「フェア」ではある。 

2016年10月11日火曜日

台風

9月、10月の授業が面倒臭いのは、台風のせいである。
午前6時に多摩東部地域に暴風警報が出ていると、午前中の授業は休講である。
代替日は設定されない。
つまり、台風が来れば休講、その日の授業はシワヨセしてやれ、ということである。

担当しているのは実習授業なので、当然のように、4日の作業が3日間、ということになる。そりゃ学生も大変である。小学生のように、お休みだバンザーイ、などと言っている場合ではない。

ところが私が学生だったウン十年前は、転校による休講はなかった。もちろんいまどきの学生さんのように全員がスマホか携帯持ち、いつでもどこでも連絡が取れるわけではなく、下宿学生も電話持ちが少なかったので、学校に来る以外ない、という状況ではあった。
おかげで、台風が来ようが、槍が降ろうが、風で傘が吹き飛ばされても、学校に来るしかない。
電車に乗ったら途中で止まり、私鉄を乗り継いでバスに乗って学校に向かった。もう既に授業は始まっており、そうとう遅刻である。バスの中でイライラしていたら、学校の手前でバスが止まった。運転手が振り向いてアナウンスする。「道が冠水しているので、バスが止められないので別経路を通ります」。バス停のある学校の前を通らず、別の道で素通りである。
最寄りのバス停で下りたのだが、そうとう水が上がっている。授業は既に終盤、これから行ってもなあ、という状況である。ずぶ濡れの上、膝上まで水に浸かり、そろそろと歩く。あああ、もう授業終了時刻である。何のためにここまで来たのだろうか。
結局学校に着いて、学食でコーヒーを飲んで帰った。

2016年10月10日月曜日

9月

夏休みが終わると、午後にも授業が入り、10月いっぱいは授業三昧な日々になる。カリキュラムというやつは、研究室主体なのか、専任教員主体なのか、はたまた学生主体と大義名分があるのか、非常勤教員というパートタイマーの都合は考えられていない。おかげで、1年のうち半分に授業が入るのだが、9月10月が最も忙しくなってしまう。現在、来年度の授業変更調整中なのだが、9月10月の2ヶ月分の授業を来年度は9月に集中させるというつもりになっているらしく、この分では9月が現在の1.5倍ほど忙しくなるらしい。

そもそも、非常勤教員が授業をする、という視点で言えば、週に1-2回のパートタイマー、というところが普通だと思っているのだが、現在担当している授業は集中講座なので月曜日から土曜日まで、というスケジュールである。考えてみたら学生時代よりも真面目に学校に通っているような気もするが。