2021年3月9日火曜日

ハイホー

 実家に犬がいたときは、近所を一緒に散歩した。一人で歩くのとは違って、犬なりに気になる家があったり、気に入ったルートがあったりする。犬種はビーグルで、ビーグルの常なのか、鼻を常に地面にくっつけて歩く。ひたすら嗅いでいるのだが、相方の人間としては地面を嗅ぐわけにはいかないので、近所の家の庭など鑑賞する。いわゆる新興住宅地なので、ほとんどが同じ大きさの敷地に、似たような大きさの家が並ぶ。それでも建て売り住宅地でないためか、それぞれ家の意匠が違う。家はもちろん、庭などもそれぞれ違うので、季節折々で表情が変わる。

通り道に、植木鉢が整然と並ぶ家があった。小さな草花が、いろとりどりの花をつけている。季節ごとに植え替えるのだろう、花の途切れることがない。その家の門扉から玄関先まで、陶器で出来た小さな小人さんたちが並んでいた。ディズニーのシンデレラに出てくる小人さんのキャラクターである。密かに「ハイホーのおうち」と命名していた。

一緒に歩く犬がいなくなって、10年以上になった。先日久し振りにその家の前を通りかかった。植木鉢は健在で、ガーデニングに精を出しているようだが、小人さんたちはいなくなってしまっていた。うーむ、ハイホーのおうちではなくなってしまった。おうちの名称を変更せねば。

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