ここしばらく、と言っても、トシのせいか、数年が十数年というスパンに近くなるのだが。
大学の入学選考試験のバリエーションがやたら多くなった。入学試験の科目選択から始まって、センター入試利用、学校推薦、自主推薦、AO入試、適性資格推薦だのともろもろ。何が選考の基準になるのか、はたから見ると分かりにくい。しばらく前から、実技試験を経て入学に至らず、「絵を描くのは苦手ですう」「美術は不得意ですう」という学生が出現するようになった。「描くことは下手だが、美術好きなので、描くことはやぶさかではなく、上手くなるためにはがんばりたい」と言うのならまだしも、「苦手なので出来れば絵は描きたくない」のがなぜか多い。世間一般で言う、「美術学校」のスタンダードは、今や昔、である。美術学校の卒業生だからといって、絵が描けるとは言えない。さらにこれに留学生試験が加わるので、入学試験は5−6種類にもなる。選考側としては、共通の合格基準があり、よく言えば「多様性」があるわけだ。
おかげで、新入生の実技授業は、学科試験だけで合格した実技超初心者を相手に始めざるを得ない。もちろん、ある程度のスキルのある学生も入ってくるので、こちらにとっては超初心者向けの講座は、当然、面白くはない。今の学生にとっては「タイパ」は重要なので、「復習」とか、違う視点での学習の再構成、といったものは、「無駄」にしか見えない。
こういったことを考えながら、年度末の3月いっぱい、新年度の授業についてあれこれ悩むことになる。